石油ピーク
石油ピーク
石油資源は有限、地球が有限だからです。石油は2億年といった長い地質年代を経て、固定化された太陽エネルギーです。その石油資源の総量は、ほぼ2兆バレルと言われており、すでに半分を消費したようです。
石油生産は最初は需要に応じて増加しますが、無限ではありませんから、いずれ生産のピークが訪れその後は下降するものです。これが「石油ピーク」です。これは「枯渇」ではありません。需要に生産が追いつかなくなる、ということです。石油に代わるものはありません、これは大変なことです。
米国は1970年が石油ピークでした。1956年、シェル石油の地球物理学者K.Hubbertは、石油生産量はベル型の曲線をたどる、そして米国でのピークは1970年と主張しました。これがHubbert曲線で、その下の面積が埋蔵量です。しかし当時は、全く信用されませんでしたが、見事に当たりました。しかしそれを世間が認識したのは1970年後、何年かたってからでした。バブルはその時はわからない、今の日本もそうですが。
それも経済は成長するもの、エネルギーも技術開発でなんとかなる、と思う人が多いからです。ですが石油価格が高騰し、経済恐慌となり様子は変わりました。石油は有限らしいと思う人が増えました。
いまも悲観派と楽観派が交錯します。石油ピークは来ている、から埋蔵量成長と言い、オイルサンドなどを勘定に入れる人も多いようです。だが、それも変わりつつあり、楽観的であった国際エネルギー連盟(IEA)ですら、今では石油が有限とみとめています。
もったいない学会の正式名は「石油ピークを啓蒙し脱浪費社会をめざすもったいない学会」です。
EPR
EPR
エネルギーの質を表す 『EPR』
EPRとはEnergy Profit Ratio、日本語に訳すと「エネルギー利益率」のことで、
EPR=出力エネルギー÷入力エネルギー
の式で求めることが出来ます。
出力エネルギー
石油、地熱などの物を動かすエネルギー源です。
入力エネルギー
石油を考えた場合、エネルギー源になるまで、物理探査、掘削、輸送、精製、販売などで多くの エネルギーが使われます。この合計が入力エネルギーです。
EPRは必ず1より大きい必要があります。
1より小さいということは、必要な入力エネルギーを作るのに、より多くのエネルギーを使うことになり、 エネルギーを作れば作るほどエネルギーの総量は減少することになります。 売れば売れるほど損をするということと同じです。
市場主義経済においては、コストでエネルギーの優劣を決めます。これが成立するのは、 コストの変動に応じて、すぐに代替品が提供できる場合だけです。
しかし、エネルギーは種類が異なれば、固体、液体、気体があり、輸送の仕方が異なり、 電気や燃料など利用形態が異なり、利用技術も異なります。
石油が無くなれば明日から石炭を使うという訳にはいきません。
更に悪いことに、至上主義経済におけるコストには、 環境に与えるコスト(環境を復元させるために必要なコスト)を入れないのが普通です。
つまり、市場主義経済の原理によって、石油に代わる最適なエネルギー源を見つけ出す事は 難しいのです。
EPRは、輸送手段、利用形態、利用技術、環境に与えるコストなどを考慮して算出する事が できるので、エネルギーを評価する優れた指標です。すなわち、EPRはエネルギーの種類 だけでなく、輸送手段、利用形態、利用技術、環境に与えるコストなどによって異なります。
油田
油田
地下に石油(正確には原油)を埋蔵している区域のことです。原油は黒褐色または黒緑色の粘り気のある液体であり、これを精製して得られるガソリン、灯油、軽油、重油などの石油製品ができます。石油は地下に存在しますが、この深度に大きな空洞のような空間があり、「石油のプール」のような状態で溜まっているわけではありません。土圧のかかる地下では、プール上の液体では存在できず、石油は岩石粒子間の細かな隙間(孔隙と呼びます)に水と一緒に入りこんだ液体状態で存在しています(これを油層と呼びます)。ミクロな孔隙が多く、石油がたまりやすい岩石を貯留岩と呼んでいます。これらは大きな集団になります。土圧の大半は貯留岩が受け持ち、土圧の一部は石油にかかります。なお、石油の存在する深度は地下100メートル以深、最近では7000メートル以深でも確認されています。経済性の観点から、埋蔵深度の浅い油層から順次開発対象とされていきまして、時代とともに対象油層の深化が進んでいきます(すなわちEPRの低下になります)。現在では、深度数千メートルの油層が対象とされています。
世界には4万箇所以上(90カ国以上)の油田がありますが、その分布には地域的な偏りがあり、60%以上が中東地域に分布しています。世界最大の油田であるサウジアラビアのガワール油田、第二位のクウェートのブルガン油田などは中東諸国に位置します。油田の規模は埋蔵量(石油の体積量)で表現され、その単位としてバレル(1バレルは約159リットル)が用いられています。可採埋蔵量5億バレル以上の油田を巨大油田、50億バレル以上の油田を超巨大油田と呼びます。さきほどのガワール油田とブルガン油田は600億バレル程度の超巨大油田です。石油の偏在性は、石油の成因に深く関わってきます。
石油の成因については、完全に解明されているわけではなく、有機起源説と無機起源説に分かれますが、現状では有機起源説が有力な説になっています。有機起源説では、大昔の動物・植物・微生物などの有機物が土砂とともに幾重にも堆積し、地熱と圧力の影響を受けながら長い時間をかけて石油になったとしています。このようにして生まれた石油は比重が小さいため、岩石中の細かい孔隙を通じて上へ上へと移動していきます。やがてミクロな孔隙が多く石油がたまりやすい貯留岩の帯にたどり着き、さらに上へ移動しようとする際、孔隙の少ない岩石が存在するとそれ以上移動することができず(石油が上部に散逸しないための蓋の役割をします。これを帽岩またはシールと呼びます)、そこ
に貯められていきます。このように効率的に大量の石油を貯めておくのに適した地質構造(これをトラップと呼びます)であれば、石油貯留層となります。図1にいくつかのトラップを示します。なお、大量の有機物が土砂とともに堆積する環境は、時空間的(地理学的かつ地質時代的)に強い制約を受けます。このことにより油田は世界的に偏って存在することになります。
地下から石油を汲み上げる(これを生産と呼びます)には、まず石油が地下のどこに埋蔵されているか場所を予測することが大切です。これには、高度なエレクトロニクス技術を駆使した地震探査技術が用いられます。妊婦さんのお腹にいる赤ちゃんの様子を画像化する超音波診断技術は、お腹にセンサーを当てて超音波を体内に送り、反射して戻ってきた超音波を捕らえて画像化します。最近では赤ちゃんの三次元的な様子、さらに時間軸を加えた3次元動画像により赤ちゃんの動く様子を立体的に観察できるようになりました。地震探査技術はこの技術の地球版と考えてください。石油を貯めてありそうな構造を発見することができます。地震探査技術による探査結果を参考にして、またいくつかの井戸を試験的に地球に掘ることによって油田として有望な区域を絞っていきます。最終的に、運良く有望な区域を発見できたら、さらに詳細な埋蔵量評価・生産性評価をしていきます。
前述のように石油の貯まった層(油層)は土圧の一部の大きな圧力を受けていますので、この油層に井戸を掘れば、圧力により井戸から勢いよく石油が噴出してきます(これを自噴と呼びます)。このように、油層が本来持っているエネルギーだけで石油を回収することを一次回収といいます。その後、長期間にわたって石油生産を続けると、油層自身の圧力は低下し、生産量はしだいに減退します。一次回収では、油層内の原油量の2〜3割程度しか生産できません。生産にしたがって油層のエネルギーが弱まった段階で、水やガスを圧入して油層の圧力を維持して石油を回収することを二次回収と呼び、回収率は3〜4割程度に向上できます。これでも油層には6〜7割の石油が残されています。そこでさらに油層に熱的あるいは化学的な刺激を与えて回収率を向上するための研究が行われています。これを三次回収あるいはEOR(Enhanced Oil Recovery)技術と呼びます。以上のように石油の埋蔵量の値は、石油の回収技術の向上により上方に修正されていきまして、これを油田成長と呼びます。
非在来型石油(現状ほとんど実用化されていないが、将来的に利用できる可能性がある石油)としてオイルサンド、オイルシェールがあります。オイルサ
ンドは侵食などの地殻変動によって油層が地表付近に移動し、軽質成分が揮発してしまい重質化した石油を含んだ砂です。カナダではすでに商業生産が行われています。生産の際に地下に水蒸気スチームを圧入して重質油を流動化させるために、投入エネルギーに見合う回収エネルギーが必要となります(在来型の石油に比べてEPRが低下します)。一方、オイルシェールは、理没深度が石油の熟成度にまで達しなかった、「石油のできそこない」であると言えます。したがってオイルシェール採取後は乾留による熱分解により石油を抽出する必要があるため、ここでも投入エネルギーに見合う回収エネルギーが必要となってきます。すなわち、この場合も在来型の石油に比べてEPRが低下します。

図1 石油トラップの種類(物理探査学会編「図解物理探査」より引用)
段、利用形態、利用技術、環境に与えるコストなどによって異なります。
EPT
EPT
太陽光のエネルギーペイバックタイム(EPT)は3年。3年で元が取れる?
EPTはエネルギーペイバックタイム(energy pay back time)でエネルギーの投資(入力)÷利益(出力エネルギー/年)の式で求めることが出来ます。最近開発の太陽光のEPTは3年という数値を見かけることがあります。
実際に3kwの太陽光発電を自宅の屋根に設置された方にお話を伺うと、元が取れるのは、20年程度はかかるとのことです。EPTが20ということになります。先ほどの3という数値と20という数値はどうして、このような差が出るのでしょうか。
実は、このEPTはお金を評価しているのでは無いのです。地球温暖化のもととなる二酸化炭素の排出を評価しているのです。太陽光発電を建設するときに、石油などの化石資源や鉄などの資源を地球から取り出すためにエネルギーを使います。エネルギーを使うことは二酸化炭素を排出します(入力エネルギー)。また、太陽光発電で発電する電気は石油火力発電の一部代替になっており、石油を炊かなくてすんでいる。(出力エネルギー)二酸化炭素で評価すると、実際の評価よりも3倍から4倍過剰に評価することになります。(20年で元が取れるのが、5年から7年という算定になります。)
それ以外の差異は、太陽光発電は多結晶式、アモルファス式とも、研究開発中で性能が日夜進歩しています。このため、すでに家庭や企業に設置したものより、テレビやマスコミでの評価は新しい開発品で評価されることになります。また、将来、市場が拡大することを見越して、製品の歩留まりが上がり、また、製造ラインの合理化が図られ、製造エネルギーが半分程度に減少させることなどを見越して製造エネルギーを過小に評価する場合があります。これらの差異で太陽光発電の建設エネルギーを半分に見積もることになります。
入力エネルギーが半分ですから、先ほどの5年から7年が半分の2.5年から3.5年となります。これで謎がとけたでしょう。
天然ガス
天然ガス
(生産のピークは2025年頃)と推定されています。しかし質的には、石油と同じく悪くなってきています。更に、輸送するために液化が必要で、液化に燃料の2割を費やします(使えるのは8割)。また、輸送にも1割程度のエネルギーが必要であります。今後石油の代替として、天然ガスの需要が高まると、可採年数は大幅に短くなると推定されます。また、確認可採埋蔵量の数値自体にも政治的要因・推定精度の問題・用語の定義の不統一などの不確実性があることを認識し、可採年数の解釈には十分注意すべきです。
天然ガスの利点の一つに、石油や石炭に比べ、燃焼したときに温暖化の原因物質である二酸化炭素や、大気汚染の原因である窒素酸化物、硫黄酸化物などの発生が少なクリーンなエネルギーであることです(下図参照)。このようなクリーンな天然ガスの利用率は、火力発電用や都市ガスの原料として着実に増え続けていまして、一次エネルギー供給構成比として、1970年代初頭は1%台でありましたが、現在は12%以上と大幅に増加しています。天然ガスは約−162℃で液化する性質があり、この場合気体の約600分の1の体積となり、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)として大量輸送・貯蔵が可能となっています。なお、LNGと似た言葉にLPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)がありますが、LPGは石油の精製過程で生成するガスのことで、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレンなどを含みます。
天然ガスの利用方法としては、都市ガス用原料や火力発電用燃料として広く利用されていますが、以下のような新しい利用方法も試みられています。天然ガスを圧縮して燃料とする天然ガス自動車NGV(Natural Gas Vehicle)が実用化され、すでに世界中で200万台以上が走っているとのことです。NGVはCNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)自動車とも呼ばれます。天然ガスから取り出した水素と空気中の酸素との化学反応で電気を作り出す燃料電池も実用化を目指し、開発がすすめられています。さらに、次世代の天然ガス利用方法として脚光を浴びるGTL(Gas to Liquids:天然ガスの液体燃料化技術) があり、ディーゼル自動車用次世代燃料として注目されています。
最後に非在来型天然ガスを紹介します。タイトサンドガス、コールベッドメタン、メタンハイドレート、シェールガス、地球深層天然ガスなどが非在来型天然ガスとして分類されます。この中で、コールベッドメタン(石炭の生成・熟成に伴って発生したメタンを主成分とするガスが、炭層中の石炭に保持されているガス)については在来型天然ガスの確認埋蔵量に匹敵する埋蔵量を有すると准定され、米国・オーストラリアなどでは活発に商業生産が実施されているため、「非在来型天然ガス」として分類すべきでないとの意見もあります。また、メタンハイドレート(水分子がつくる籠の中にメタン分子がとり込まれている氷状の結晶)の資源量についても資源量は豊富(在来型天然ガスのそれ以上)と言われていますが、EPRを算出できる段階ではなく実用化のめどはたっていません。

図 石炭を100とした場合の排出比
太陽電池
太陽電池
太陽電池とは、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機器を指します。英語ではSolar cell、あるいは光起電力を意味するPhotovoltaic (PVと略されます)と呼ばれます。一般的な発電機器と違い、一度設置すると燃料を供給する必要がなく、自然エネルギーである太陽の光さえあれば発電をし続けます。(言ってみれば太陽の光が燃料の位置づけになりますね。)更には一度電池を作ってしまえば、発電中に地球温暖化ガスの発生もない、極めてクリーンなエネルギーです。
光がエネルギーをもつ粒子(光子)である事は19世紀から分かっていました。20世紀に入り、相対性理論により理論的には太陽電池が出来ることが予測されていましたが、現在のような実用的な太陽電池の基礎となるものは1950年代にアメリカのベル研究所が発明したものがその原型となっています。
太陽電池の発電素子は半導体で出来ています。半導体は普段は電気をほとんど通しませんが、p型と呼ばれるもの(内部で電子が不足気味の半導体)とn型とよばれるもの(逆に電子が余り気味の半導体)を接合すると、電気が一方向によく流れる性質ができます(いわゆるダイオードですね)。これだけでは電気を通す「弁」の機能のみなのですが、太陽電池では光によってこの弁が今度はポンプのような機能を持つようになり、光エネルギーによってどんどん電気をくみ出す仕事をします。光の当たった半導体の表面には電子(マイナスの電荷)が泉のように湧いた状態になるのです。逆に裏側には電子の反対の正孔(プラスの電荷)が集まっている状態になっていて、表面と裏側にそれぞれ電極をつけると、乾電池のようにある電圧を発生する電池のようになると考えれば分かりやすいでしょうか。(実際にはポンプのように可動部はありません、また電池のように電気を貯めておくことは出来ないので、あくまで例えと理解してください。)太陽電池の性能については太陽光の持つエネルギーを100%としたときの電気の発生量が何%かで主に評価されます。これを光電変換効率(あるいは単に変換効率)といいます。
現在主流の太陽電池は結晶シリコン系と言われるもので、パソコンのCPUやメモリーに使われる半導体と同じシリコンウェハー(薄板)を使用しています。シリコンは地球上に2番目に多い元素ですが、高性能の半導体に使われるシリコンはイレブンナインと呼ばれる99.999999999%の(9が11個つながる)純度を持つ、いわゆる高純度シリコンです。太陽電池では多少低い純度でも製造可能と言われていますが、中間グレードの高純度シリコンはほとんど生産されていなかったため、半導体用に生産されたシリコンの規格外品が主に使われてきました。最近は太陽電池の生産量も増えてきており、この高純度シリコンが足りないという状況になっています。
主な太陽電池の種類
太陽電池の種類には数多くのものが存在します。図1は太陽電池の種類を構造面から分類したものです。太陽電池には大きく分けて、バルク系(インゴットなどのかたまり(=バルク)から切り出して造るもの)と薄膜系(メッキのように基板の表面に薄膜層を形成するもの)の二つがあります。
現在主流となっているのはバルク系の中の、結晶シリコンタイプですが、その中にも単結晶シリコンタイプ、多結晶シリコンタイプといった種類があります。単結晶シリコンタイプは歴史も古く、かつ性能も高い(変換効率で14~17%)のですが、コストが高くつくという難点があります。多結晶シリコンタイプは単結晶でコストがかかっているシリコンインゴットの引き上げ工程(有名なチョクラルスキー法です)を経ずに、溶融した高純度シリコンを鋳型で固めて結晶化させ(鋳造法と言います。この結果単一の結晶ではなく、多くの結晶が寄せ集まった多結晶になります)、これをピアノ線を使用したワイヤソーでスライスしてウェハーを製造します。最近は単結晶に近い性能(変換効率で13~15%)を出せるようになっています。その結果、コスト性能バランスから、現在最も多く製造されているタイプです。
これらバルク系シリコンの特徴は良い性能を出せる代わりに高価な材料であるシリコンを多く使用することが挙げられます。従って今後の太陽電池の普及に最も重要といえるコストダウンが進みにくいという難点があります。これに対して、もう一方の薄膜系は、基板(ガラスやステンレスなど)の上に非常に薄い膜を形成するため、高価な材料の使用量を従来の1/100以下程度に抑えることが出来ます。このため、薄膜系はアモルファスシリコン太陽電池が中心でしたが、20年以上も前から将来技術として研究開発されてきました。ここ数年は結晶系シリコン太陽電池用原料の不足問題から、新しい薄膜系太陽電池や有機材料を使用した太陽電池など百花繚乱の状態になっています。
薄膜系の代表技術としてはアモルファスシリコンタイプが挙げられます。シリコンの原料ガス(シラン系ガス)をプラズマ反応で分解し、非晶質(結晶構造を持たない=アモルファス)の薄いシリコン層を形成します。材料の使用量は少ないのですが、性能面で結晶系の約半分程度(変換効率で6~7%)しか出せないため、広く普及することはありませんでした。最近では、太陽光のスペクトルの全域を吸収するために、2重(タンデム)、3重(トリプル)に積み重ねる積層化という手法で、青色の光はトップセルであるアモルファスSi太陽電池で、緑から赤色の光はボトムセルである多結晶Si薄膜太陽電池部分で吸収するというように役割分担することで、性能向上を図った技術が実用化されようとしています(変換効率で10%~11%)。
同じく薄膜系ですが、現在開発が進み市場に新たに出てこようとしているものにCISと
呼ばれる太陽電池があります。これは従来のシリコン系太陽電池とは大きく異なり、非鉄金属の銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)、硫黄(S)、ガリウム(Ga)をミックス(合金化)して作られます。銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)の元素の頭文字からCISと呼ばれます。この太陽電池は太陽電池の材料による分類では化合物系に属します。この材料系では、GaAs系の宇宙用太陽電池のようにバルク系は結晶シリコンの3倍位高い性能が実現されています。使用する材料がシリコンより格段に高価なため、宇宙用などかなり特殊な用途以外はコスト面で折り合いません。この材料系は集光型太陽電池分野で最近注目されています。CISの変換効率は現状11~13%で、その本来の性能をまだ我々人間が引き出せていません。今後更に向上すると期待されています。
その他にも新しい技術がどんどん開発されています。例を挙げると球状シリコンタイプや色素増感型と呼ばれるものです。球状シリコンは従来の結晶シリコンと同じ原理で発電しますが、使用するシリコンをウェハーではなく、直径1mm程度の小さな球状にすることによりシリコン使用量を削減するというものです。ウェハーを作る際にはインゴットをワイヤーソーと呼ばれるのこぎりでスライスしますので、通常でも1枚ウェハーを作るのに1枚分の切り粉が発生します。球状シリコンは切る工程がなく、高温で溶融したシリコンを真空中で自由落下させ球状に加工しますので、シリコン使用量が従来の1/5程度に抑えられるというものです。
色素増感型は今までの太陽電池と全く異なり、酸化チタンの光活性特性を利用して、イオンのような電気反応を起こし発電させるものです。光の吸収をよくするために特殊な色素を入れて感度をよくしているので色素増感型と呼ばれます。きわめてシンプルな製造方法で出来ると言われており、低コストで製造できると期待されていますが、現在まだ変換効率が低いこと(実用的なもので約5%)および屋外使用でのUV光に対する耐久性などに問題があり、これらの克服を目標とした研究開発の真最中です。

太陽電池のペイバックタイム(EPT)とEPR
太陽電池はクリーンなエネルギーと冒頭に書きましたが、本当に環境に優しいものなのでしょうか?これをEPT(製造時に必要なエネルギーを何年で回収できるかを示す指標。詳しくはエネルギーペイバックタイムの項を参照)やEPR(取り出せるエネルギー全量を取り出すために必要としたエネルギーで割った値。同じくEPRの項を参照)の面で評価すると、最近の太陽電池ではEPTでは2年から4年で、この期間で製造時にかかったエネルギーを回収できるとされています(この期間以降は完全にクリーンなエネルギーを供給し続けることになります)。EPRに換算すると2~8程度と考えられます。まだコストも高く普及が全く進んでいなかった時代の太陽電池は、製造にたくさんのエネルギーが必要(特にシリコンの高純度化とインゴット製造の工程)とされていましたが、使用するシリコン量はここ10年程度でおよそ半分程度になっており、さらに変換効率の向上や、工程の効率化で製造エネルギーも半分以下になっています。一方で耐用年数は初期に設置された太陽電池で30年以上の稼動実績が出ており、以前10年程度と考えられていた寿命がもっと長いことが証明されてきています。最近のものでは、30年以上持つことが前提で設計されています。(当用語集のEPRの計算では、現時点で確認されている20年を用いています。)
これらの値は現在主流の結晶シリコン系太陽電池での値ですが、新技術を用いた太陽電池(特に薄膜系)では製造エネルギーが従来型の半分程度に削減できると言われていますので、EPTでは1~3年程度、EPRでは15~20程度が実現されるであろうと予測されています。加えて、以上の値は日本における日射量を前提に計算されていますが、より日射量の多い南欧諸国、アメリカの西海岸等でかなりの量の太陽電池が設置され始めています。このような地域では日本の1.5倍程度の発電量が期待できるため、EPTでは1年未満、EPRでは20~30以上となります。以上から、やはり太陽電池は究極のクリーンエネルギーであると言えるでしょう。
少し複雑になりますが、EPTの計算式を示すと、以下の通りとなります。
EPT(Energy Payback Time)
EPT=入力(電気としての投入エネルギー+化石燃料としての投入エネルギー)÷
出力(年間に発電される電力エネルギー)
Ie : 電力としての投入エネルギー
If : 化石燃料としての投入エネルギー
Oe : 発電される電力エネルギー/年
電力とエネルギーの換算係数 :
1kw =0.86Mcal
但し、どれだけの二酸化炭素の排出を抑制出来るかの観点で換算係数を出すと、
1kw =2.25Mcal となります。
計算式は、
EPT = [Ie(2.25)+If ] / [Oe(0.86)]
EPRは、取り出せるエネルギー全量を取り出す為に必要としたエネルギーで割った値なので、耐用年数を20年とすると、
EPR = [Oe(0.86)×20 ] / [Ie(2.25)+If ] となります。
付記
太陽電池のEPT及びEPRの計算において、NEDO及び独立行政法人産業技術総合研究所 太陽光発電研究センターでは、当学会とは異なった方法を採っております。太陽電池を製造するのに必要な電力エネルギーをCO2換算で熱量に戻している点では当学会と同じですが、太陽電池が出すエネルギーについては、当学会では発電される電力エネルギーをそのまま使うのに対し、NEDO及び太陽光発電センターでは、CO2換算で発生するエネルギーを捉える方式を採っている為、EPTはその分短くなり、EPRは高く計算されます。
参考まで 以下にその計算式を記します。
EPT = [Ie(2.25)+If ] / [Oe(2.25)]
EPR = [Oe(2.25)×20 ] / [Ie(2.25)+If ]

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